~マンガと想い出と懐かしさと~
みなさんは、”マンガを読んでいますか?”現在進行形で楽しく読んでいる人も、昔は読んでいたけど読まなくなったという人もいるでしょう。
特に学生の頃は読んでいたけれど、社会人になってから読まなくなった人が多いのではないでしょうか?
時間に追われている中、マンガを読む時間を確保するのは難しいかもしれませんが、ストレスや疲れを解消するためにマンガを読んで見ませんか?
嫌な事があった時、気分が落ち込む時、なんだかモヤッとする時にマンガを読むと、不思議と意識を切り替える事が出来ます。
今回は、“心がリフレッシュする大人が楽しむマンガの力”のメカニズムについてご説明します。
なぜマンガを読まなくなるのか
昔は読んでいたのに読まなくなった原因の一番は、”時間が無い”のが一番の理由だと考えられます。
特にスマホの登場により、以前は本を読んでいたスキマ時間は、SNSや動画などを見ているだけで、時間がアッという間に過ぎていきます。
社会人になれば、自分で時間を作らなければ時間はできません。その時間の優先順位をつけた場合、マンガを読むという時間が減るのは仕方ないかもしれません。
ですが、行動とは反対に”読みたいと思っている人が多い”と周りの人を見て感じています。
実際に、三宅 香帆さん著「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」がベストセラーとなっているように、読みたくても読めないという人がこのタイトルの本に手を伸ばしているのでしょう。

昔好きだったマンガを読んでみたら
先日、マンガを楽しむ会を開催しました。マンガ好きが多かったので話が弾み大変盛り上がったのですが、その中でも一番盛り上がったのは「昔読んでいたマンガ」の話をしている時でした。
小学生の頃に読んでいたマンガ、中学生、高校生の時に読んでいたマンガ、そそれぞれの時期に夢中になって読んだ懐かしいマンガの話をする時は、みんな目がキラキラと輝き、「懐かしいね~」という言葉が自然に出てきます。
各世代の想い出のマンガは、心に深く残っていて、「このマンガ好きだったな~」と口々に当時の想い出とその時のエピソードがよみがえっていました。

懐かしい気持ちとは
懐かしい記憶とはどういったものでしょうか。心理学的での人間の記憶には、時間と共に心に残る思い出であり、特に「エピソード記憶」に関連しています。
人間の記憶は「意味の記憶」と「エピソード記憶」に分けられます。
- 意味の記憶:実体験を伴わない知識で、例えば「キャンディ・キャンディというタイトルのマンガやアニメを知っている」という認識がこれにあたります。
- エピソード記憶:実体験に基づく記憶で、「キャンディ・キャンディのマンガが大好きで、アニメを妹と一緒に主題歌を歌いながら見ていた」という具体的な体験を思い起こさせます。
この「エピソード記憶」は時間や場所、当時の出来事を伴った一連の情報として形成され、それらを想起することで再体験する事が出来ます。「出来事に対する自伝的記憶」と称されることもあります。
このような出来事に対する自伝的記憶には、懐かしさという感情が深く結びついていて、特別な意味を持つものです。
懐かしい気持ちのトリガーは「マンガ」
懐かしさの感情を引き起こすにはトリガーが必要となりますが、そのトリガーは昔読んだマンガでした。
昔読んだことのあるマンガを見た時に読んだ体験の記憶がよみがえり、懐かしいと感じたのです。さらに、「なつかしい出来事を想起すると,主観的幸福感の向上や,社会的つながりを実感できるなど,心理的に良い効果が生じる」ことが論文で報告されていることから、精神の安定としてもとても効果があります。
現代は情報があふれているため、スマホやテレビ、ラジオを通じて最新のニュースや出来事を簡単に知ることができます。また、知りたい情報をすぐに調べられる便利さもあります。しかし、その一方で、膨大な情報に振り回され、疲れを感じることもしばしばあります。
気分転換に面白いマンガを読みたいと思ってネットで調べ始めると、マンガの販売数やランキング、各種マンガ賞、さらにはマンガ好きの書評など、さまざまな情報が溢れてきます。TikTokやYouTubeでも多くの情報が飛び交い、次々に目に入ってきます。このような状況では情報が多すぎてお腹いっぱいになり、気付けば時間だけが経過してしまい、目的のマンガを読む時間が無くなってしまうことがあります。
昔読んだマンガをもう一度読んで見る
そんな疲れたときは,一度本棚から昔読んだマンガを読んで見るのもいいかもしれません。もしくは、昔読んで面白かったなというマンガをもう一度読んで見る事をお勧めします。
懐かしい気持ちと共にその時に感じた感情もよみがえりリフレッシュできるはずです。
懐かしいという気持ちは、実体験をともなっており、その気持ちを何度も思い出し、再体験できることは優れたAIにも勝る人間だけの特権かもしれません。

参考:川口潤・中村紘子・鈴木彩華 (2018) 「なつかしい記憶を思い出すと待てる―なつかしい記憶想起を伴う時間割引課題における視覚的イメージ能力の検討―」日本心理学会第82回大会発表論文集